2020年3月16日、日銀は18・19日に開くはずだった日銀会合を前倒し、昼から会合を行うことを決定した。さらに、他国の緩和に合わせ、ETFやCP/社債の買い入れを3年ぶりに倍額にすると発表した。3月15日にはアメリカが緊急で追加緩和を発表するなど、新型コロナウイルスをめぐる混乱がいつまで続くか、目を離せない状況だ。
米国の緊急追加緩和
2020年3月15日、米国の米連邦準備理事会(FRB)は緊急の利下げを発表した。FRBは3月3日にも市場の予想外となる0.5%の利下げを行なったばかりで、2週間で1.5%利下げを行なったことになる。
3月に入り米国の株式市場は混沌としている。1日にダウ平均株価が2,000ドル下落し、1ヶ月で25%も株価が下落した。この事態になっては政府もとにかく混乱を収めるために手を打たざるを得ない。
トランプ米大統領は15日、ホワイトハウスで記者会見し、米連邦準備理事会(FRB)による1%の緊急利下げについて「すばらしいことだ」と述べた。利下げを再三要求し、パウエル議長を繰り返し批判してきたが、事実上のゼロ金利政策の決定を受け「FRBを祝福したい」と評価した。「市場参加者は喜ぶべきだ」と述べ、市場の好反応に期待を表した。
今回の利下げにより政策誘導金利は0%〜0.25%となり、ゼロ金利政策を実施することになる。
さらに量的緩和も開始し、米国債と住宅ローン担保証券(MBS)を7,000億ドル(約75兆円)買い入れる方針を明らかにした。
しかし市場の反応は予想外だった。日本時間の16日朝、米国の株価指数先物はストップ安と、予想された以上の大幅な利下げに市場の不安を煽られた形となった。
日本の追加緩和
米国の緊急利下げに、日本も大きく反応した。3月16日朝、日銀の黒田総裁は18・19日に開くはずだった金融政策決定会合を前倒すことを決め、16日昼から会合を行うことを決定した。
さらに市場がどのような決定を行うか注目する中、14時すぎに追加の金融緩和策を発表した。
年6兆円を目標としているETF(上場投資信託)の購入は、年およそ12兆円を上限に積極的な買い入れを行うとしている。REIT(不動産投資信託)についても、当面の間、年間900億円から2倍の1,800億円に買い入れを増やす。さらに企業が資金調達のために発行するCP(コマーシャル・ペーパー)や社債の購入額を拡大する。
また、感染拡大の影響で売り上げが減少している企業を支えるため、民間金融機関が融資を増やすよう資金供給の枠組みを新たに設け、ことし9月末まで0%の金利で貸し出すことにする。
FRBと日銀の追加緩和の先
FRBと日銀は相次いで緩和を行ったことになる。3月になり市場の混乱はさらに強まっており、相場はかなり荒れている。
FRBに関していれば、ゼロ金利まで金利は低下し、言ってしまえば行くところまで行ってしまった感がある。そこまでやらなければならないほど、米国は本気で今回の相場に対応しようという意識が垣間見える。
とはいえ手を打ち尽くしてしまった感が否めない。これ以上の金利低下は日本やドイツをはじめとするEUと同じ、出口の見えないマイナス金利しか道がない。量的緩和にしろ、買い入れには限界がある。
日本はさらに追い詰められている。すでにマイナス金利に突入しており、これ以上の深掘りはどの国も実施したことがない未知の領域で、効果は不透明だ。金融機関への負荷から大きな反発が見込まれる。
量的緩和もすでに限界に近い。これまで相場をぎりぎりで支えてきたのは日銀の買い入れとも言える中、今回さらに買い入れを倍額にし買い支えるというもはや博打というか、ギャンブルに負けたから取り返すためにさらにぶっこむとも言える乱暴な対応だ。
とても注目べき点は、FRBや日銀が大きな緩和を決めたにも関わらず、相場は大きく下がった点だ。16日のダウ平均株価は引き続き13%下落した。これは、何を意味しているのだろう。
今まで中央銀行の施策は信頼されていた。その証拠に中央銀行が動けば翌日の株式市場は大きく跳ね上がってきた。つまり、今までの中央銀行のやり方が市場で信頼されなくなったということだ。今後の中央銀行も大きく株式市場が上に動くとは考えにくく、かなり難しい状態に追い込まれているということだ。
一刻も早く混乱が解決することを願う。