日本でも新型コロナウイルスCOVID-19が猛威を振るっているが、相変わらず東京都内の通勤時には満員電車で朝のラッシュが続いている。都内の会社は在宅勤務を奨励しようとしているが、働き方改革が進んでおらず、在宅勤務を行うことは難しい状態だ。なぜ日本では働き方改革が進まないのか、考えていこう。
働き方改革とは
そもそも働き方改革とは、「一億総活躍社会に向けた多様な働き方を可能にし、中間層の厚みを増し、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現すること」と政府は掲げている。これは建前であり、更なる少子高齢化の進行に備え、日本が衰退しないよう労働生産性をあげるための政策であり、実現方法でもある。
働き方改革(一億総活躍社会)は、「労働人口を増やす(女性や高齢者)」「出生率を向上させ将来の働き手を増やす」「労働生産性を上げる」という3つの柱から成り立っている。最初の2つについては、スウェーデンなど本当にごく一部の国を除き、どの先進国も明確な改善策で実現できずにいる。端的にいえば、対処できそうなものが3点目しかないのだ。
なお、2019年4月1日より働き方改革関連の法案の一部が施行されており、中小企業にとっても働き方改革は重要な課題のひとつとなっている。
働き方改革が進まない理由
企業や経営者、会社人にとっては、働き方改革とは上に紹介したような高尚で空虚な目標ではなく、法令遵守のために必要となる対策が必要な事項でしかない。残業時間制限の超過が法令に抵触するというマイナス要素(減点対象)でしかなく、積極的に取り組むインセンティブはそもそも存在しない。
外資系や早くから働き方改革に取り組んでいる企業は、ワークライフバランスや育児などに配慮し、充実した働き方ができるように計らってきた大企業ばかりだ。そのような企業は充実した働き方が長期的には会社の高いパフォーマンスを生み出すと信じている。(残念ながら、そのような対策が好業績につながるという有意な結果は、世に出ていないようだ。)
在宅勤務がなぜできないのか?
働き方改革のもっとも目に見える成果は「在宅勤務の実現」だ。在宅勤務とは文字通り、自宅にいながらオフィスで仕事をするかのように通常の業務を行うことだ。似た用語としては「リモートワーク」というものもあり、こちらは自宅というよりは共用オフィスなどを使ってオフィス外で通常の業務を行うことだ。
日本では、これがなかなか浸透しない。
もっとも大きな理由として、在宅ではコミュニケーションがとりにくいという点だ。日本では旧来からの忖度するコミュニケーションが求められ、上司の顔色を見なければ仕事がしにくい。社内でも他部署への依頼には、お伺いが必要となることも多く、対面でなければ何かと物事が進まない。
また、上司は部下を強くマネジメントしようとすることが多く、完全に任せきりにすることがあまりないため、必然的に対面ないしは同じ場所で働くことが望ましいと考える。この点も日本的な傾向だ。
他にも海外と比較して日本はテクノロジーやツール類に疎く、社内や部内で承認が得られなかったり導入がなかなか進まなかったりという事情もある。
つまり「日本的コミュニケーション」「部下への仕事の任せ方」「テクノロジーやツールへの疎さ」という三重苦により、日本では在宅勤務の実現すらままならないのだ。
今回を機に働き方改革を進めるべきだ
おそらく、今年は働き方改革を進める大きなチャンスだ。幸か不幸か、今年は年初から新型コロナウイルスの騒ぎがあり、夏には東京五輪も控えていることで交通網にはかなりの混雑や混乱が予想される。もし今年中に日本で働き方改革を進めることができなければ、10年間は物事が進まないだろう。
また、政府も働き方改革を企業に進めてもらうよう、明確なインセンティブを与えるべきだ。